この4月、スタジオが7年目に入りました。
ふと、自分がなぜこの仕事をしているのか、書いてみようと思います。お客さまに「なんでこの仕事を?」と聞かれることがあるのですが、一言で答えるのが難しくて、いつも少しだけ言葉に詰まるからです。
振り返ってみると、僕がずっとやってきたことは、「体の使い方を見直すこと、動くときに意図を持つこと」このテーマの周りを、ぐるぐると回ってきたような気がします。
陸上部の少年が見ていたもの
きっかけは、高校時代の陸上競技です。
全国区の選手たちに囲まれて、目の前で彼らの走りを見る時間を過ごしていました。「どうすると足が速くなるのだろう」「足が速い選手と遅い選手の違いは何だろうか」そんな問いをずっと持ちながら、体を観察するのが好きでした。
今思えば、この時点で、才能ではなく「体の使い方」の違いを見ようとしていたのかもしれません。
「一部を変える」ことへの違和感
その延長で、パーソナルトレーナーとして働き始めました。
けれど、当時のお客さまの多くは「脚を細くしたい」「お尻を引き締めたい」「痩せたい」という目的でいらっしゃっていました。
そこに、ずっと違和感がありました。
体は、全身でひとつのものなのに、全身を見ていかなければ、一部が何かに変わるとは思えなかったのです。見た目だけを変えようとすることは、本当の意味で体と向き合うことにはならないのではないか。そんなことを、22歳くらいの頃に考えていました。
この違和感が、「体のつながり」を学びたいという気持ちにつながっていきました。
筋膜、ピラティス、そして回り道
当時、まだメジャーではなかった「筋膜」という言葉に出会います。
調べていく中で、「ピラティス」と「ロルフィング」というワードにたどり着きました。ロルフィングを学ぶには海外に出る必要があって、当時の僕にはその勇気がなくて、結果的にピラティスを選びました。なんとも曖昧な選択です。
そこから3年ほど、様々なピラティスのレッスンを受け、養成講座に通い、体について学ぶ時間を過ごしました。
ただ、正直に言うと、ピラティスとトレーニングの違いが、なかなか見出せなかったのです。それでも、全身のつながりを感じる感覚は、ピラティスの方が深かった。だから、違いがわからないまま、学び続けていました。
やがて、体のつながりや筋膜をテーマにしているピラティススタジオに出会い、ようやく「ピラティスとトレーニングの違い」が腑に落ちました。ここまでで、ピラティスを学び始めてから6年ほど経っていました。
触れてもらった、あの瞬間
そんな頃、佐藤博紀(ヒロ)さんの講座に出会います。ヒロさんがロルファーだと知った時、憧れていたロルフィングにつながった気がして、ワクワクしていました。
でも、本当に驚いたのは、実際に触れてもらった時の感覚でした。
それまで、僕の中で「施術」と言えば、揉んだり、押したり、ゴリゴリされるイメージしかなかったのです。でもヒロさんの手は、ただ触れているだけ。
なのに、ゆるまっていく感覚。包み込まれている感覚。呼吸がふわっと広がっていく驚き。
よくわからないけれど、何かが確かに変わっていく感覚がありました。そして、体が楽になっていくのです。
この体験と、ヒロさんの体への向き合い方、考え方そのものに惹かれました。そして思ったのが、「自分も、こういうふうに触れるワークをしたい」と。
Sumicaで大切にしていること
僕がこの仕事を始めたきっかけは、自分自身の不調や痛みではありません。
体を観察することが好きで、体のつながりや呼吸とのつながりに気づいていくプロセスに、探求の喜びがあったから。そして、やさしく触れるという手法で、体がゆるみ、呼吸が深まる、その驚きと心地よさを、自分でも届けたいと思ったからです。
だから今、Sumicaに来てくださる方に対して、僕が願っていることは、とてもシンプルです。
呼吸が深くなってほしい。そして、体を整えることは大切なことなんだ、ということに気づいてほしい。
一回のセッションで何かを劇的に変えるのではなく、自分の体と向き合うことの価値を、日常に持ち帰ってもらう。それが、Sumicaの役割だと思っています。
こうして振り返ってみると、16歳の頃に抱いていた「体の使い方の違いは何だろう」という問いが、20年経った今も、形を変えながら続いていることに気づきます。
当時の自分は、まさか自分が誰かの体に触れる仕事をしているとは思ってもいませんでした。ピラティスも、ボディワークも、まだ何も知らなかった。
それでも、あの頃に芽生えた「体を観察することが好き」という気持ちが、ずっと自分の中にあって、ここまで連れてきてくれました。
20年続いている問いがあること。それ自体が、とても幸せなことだと思うのです。
7年目のSumicaも、この問いの延長線上にあります。これからも、静かに、体と向き合う場所であり続けたいと思います。



