体を変えていくとき、「どこを鍛えるか」「どの筋肉を使うか」よりも、「どう動いていくか」を思い描くことがとても大切です。
たとえば、「足を上げる」という動き一つでも、骨盤から?お腹から?背骨から?どこから動きが始まると想像するかで、体の使い方がまったく変わってきます。これは感覚や気の持ちようではなく、神経系の働きによる変化です。
私たちの脳は、体を動かすときに“運動の地図”を使っています。そして、その地図は**「イメージする」ことによって描き直すことができる**のです。
■ イメージするだけで神経は反応している
動きを想像するだけで、実際に体を動かしたときと同じように、脳の運動野(一次運動野・補足運動野など)が活動します。
これはMRIの研究でも明らかにされていて、「イメージだけで神経回路が活性化する」ということがわかっています。
つまり、動きをイメージすることは、神経の中でその動きを“何度もリハーサルする”ことに似ています。
そしてこの繰り返しが、神経の回路を強くし、実際の動きを変える下地を作っていくのです。
■ イメージは「力を抜く」「広がる」といった質にも影響を与える
イメージがもつ力は、筋力だけでなく、動きの質や感覚にも影響します。たとえば「上に引き上げられている」「波のように背骨がやわらかく動く」といったイメージを使うと、筋肉の出力が変わり、体が軽く感じられることがあります。
逆に「グッと力を入れる」「固めて支える」というイメージを持つと、筋肉も実際に“固める方向”に働いてしまい、余分な緊張が生まれやすくなります。
だからこそ、ピラティスでは「どう動きたいか」「どんな感覚で動くか」を丁寧に思い描くことが大切なのです。
■ 動きを変えるのは、「イメージする力」かもしれない
イメージは、ただの頭の中の妄想ではなく、神経系を介して体の動きを変える、確かなアプローチです。
ただ動くのではなく、動きを思い描きながら動くことで、体は内側から静かに変わっていきます。
それは、がんばって形を整える動きとは違って、もっとやさしく、もっと深く、自分の神経に響くような、そんな動き方。
スミカのセッションでは、こうしたイメージと言葉の力も大切にしながら、ひとりひとりの「動きの地図」が少しずつ描き直されていくような時間をつくっています。